偶然の恵比寿

恵比寿の弁護士 藥師神 豪祐のブログ

旗を立てること

ソーシャルデザイン。…来年のテーマにしようかな。大学在籍時に泣きながら数3数Cを勉強しながら専攻していたミクロ経済学のうちのゲーム理論は、インセンティブデザインの学問だった。デザイン。デザイン。

サッカー界で花開いた野心的なデザインといえばドイツによるものが知られている。

ドイツがCLで一勝もできずグループリーグ敗退を喫したのは00年(オランダ・ベルギー共催の大会)の出来事。負けた。どうしよう。…からの大胆なムーブに惚れ惚れしてしまう。「考えること」と「動くこと」が両輪であることは、ペルソナ5がもたらした幾つかあるメッセージのうちの一つでもあるし、ビーストの本にも書いてある需要な経験則(10年ぶりくらいにRPGをプレイした。ペルソナ5は素晴らしかった。素晴らしい。気が乗ってFF15までやりました。こちらも良かったです)。ドイツのサッカー界は、ドイツ中を400近い区域に分けて、1000人程度の指導者を送り込んだ。大胆。ドイツ的。ブンデスの1部2部にユースアカデミーを持つことを義務付けた。そして、どのクラブにも12人のドイツ人がいる。それにとどまらず、6人の地元出身選手がいることになった。

という話は有名であるが、アイスランドが同様に00年から一大プロジェクトを仕込んできたことはあまり知られていない。かもしれない。

アイスランドといえば今年のEUROで大きな達成を果たした。イングランドを撃破しベスト8に残った。会場にヴァイキング・クラップが響き渡った。初出場でベスト8。人口はたったの33万人程度。工夫があり、実践がなされた。評価ではなく、事実を積み上げた。アイスランドは00年からの改革で、指導者全員にライセンス取得を義務付けた。雪でピッチが使い物にならなくなるため、なんとピッチ入りの巨大ドームを国中に建設した。そして16年目に芽吹いた。ちなみにアイスランドは、もう一つの偉業を成し遂げたレスターよりも人口が少ないらしい。

以上が「落とし所に落ちると気持ち良い」パターン。「競争」というコンセプトを元にした穴探しと穴埋め。ピーター・ティールからすればコミュニストのコンセプトだと嗤われる。かもしれない。しかしボルヘスは別のことを言うはずだ。彼は、長大な物語があると仮定し、その要約として小説をしたためている。ボルヘスの文体の美しさは、貫かれた意図の強固さがもたらしているはずだ。「落とし所に落」とす美しさは絶対にある。

ただし、この「落とし所に落ちると気持ち良い」は、両輪の片方にすぎない。『ゆれる』という圧倒的代表作をもつ西川美和氏の著書。『映画にまつわるXについて』という本にこのような記載があった。「初めから落とし所のわかってるものを作るのはつまらない。」ああこれだ。そう思った。これに尽きる、と。ランダムな出会い。ランダムなアサイン。ランダムな紹介。ランダムな握手。その中から確信をもったアサインと、確信をもった握手。確信をもった行動。上記のアイスランドの知識は、サトミキさんの水着入浴シーンが観たくてフジテレビオンデマンドで現在一週間無料で観れる「蹴旅」というサッカー旅番組から得た知識だ。ランダムな出会い。

ある種の共同幻想から自己を解き放つ動き。からの、自分の物差しを確認する動き。ランダムな出会いといえば、この本との出会い自体もそう。Kindleのセール本にこれがあるのを土曜の朝に見つけた。気まぐれに手を出したり、気まぐれに声をかけたりしてみる。ただしいつもの注意が必要だ。「敗北に、論理を付して、合理化すること(いちばんダサいやつ…)」との違いを理解する必要がある。「勝ち」の手応えを得る必要がある。

このコンセプトにはピーター・ティール先生もPalをPayするはずだ。ゴールは常にシンプル。市場の独占。これまでなかった山を見つけて、そこに旗を立てる。そして見下ろす。ふと思い出して本棚に近寄った。俺は山を登るんじゃなくて。頂上にいて。ただそのことを旗を立てて知らせている。あれ、これ。雑誌BRUTUSの07年6月15日号で松本人志さんも同じこと言ってました。頂上に到達済みのアイディアがどこかにあるとかいうロマンス。戸惑うくせに絡みつく花びら。生まれ変わる天使。