偶然の恵比寿

恵比寿の弁護士 藥師神 豪祐のブログ

会いにいく

口コミ、どうやって広まっているのかなといつも思う。BtoBの債権回収(派生して、利用規約を修正したり、Webサービスのあれこれ)と、芸能関係の案件をこれほど扱うようになるとは思っていなかった。いずれも、筋として悪くない事案が多いので、精神的負担の点からも悪くない。このままこの事務所はそんな感じで進んでいくのかなと、漠然と思っている。

手渡せていなかったノウハウを、少しずつマニュアルにしてまとめている。通常すぐにコモディティ化するような定番の思考セットや経験則も、業務の性質上(守秘義務が厳格であることに限らず。例えばサッカー代理人の交渉現場の様子が具体的に広まったりしないのと同様に。)、言語化され書店に並んでいたりしていない。いちいち手取り足取りしなければならないのか、と思う日もあったけれど。夏前くらいから、手取り足取り記載することにした。

そうはいってもゴールデンな一手は存在せず、事案や相手をどう見極めるかが本質。結局は、技術や能力の問題というよりは、どれだけ真剣に事案と向き合うかやどれだけ自分の哲学を持って他者と接してきたかによる。どうしても振る舞いに出てしまうのは、その人の本質の部分。それは「真剣(誠実)さ」。限りある短い命を生きることに対して真剣(誠実)か、ということに尽きる。癖がついていないと、甘くなってしまう。意識するだけでは役に立たない。

業務上、少しでも困ったら、とにかく誰かに会いにいく。進学校を卒業しておいてよかったとか、東大出ておいてよかったとか、真剣に思ってしまう。やはり大きい。アワリー10万円近い先輩にも会いに行って相談する(帰り道に、返せるものはなんだろうと悩み込んでしまうけれど。後輩たちに返せばいいのかなと納得し、いつも泣きそうになりながら帰る)。

そうはいっても具体的な事情は当然ながら話せないので、なにを得て帰るかといえば、方法論や方向性についての確信だけ。本当に最先端の領域は、どの事務所でもやっていることは変わらない。例えばゲームに賞金をつけるときに悩む景表法なんかも、緑本読み込んで、監督官庁に連絡して、と。どこも一緒。法律事務所の弁護士も、インハウスの弁護士も。それ以上のことはない。あとは、どれだけ真摯に深く向き合うか。

たまに、ゆっくり出歩いている。そういう風に時間が使えるようになったのも、マニュアル化の恩恵。おもしろいもので、ちゃんとマニュアルにして渡しておくと、業務の質が明確に改善される。言わなくても伝わることが増えた。毎日自分が思ったことや学んだことを全社員にメールしているのって誰だっけ。AirbnbのCEOだったかな。そういえばそのCEOも情報取得のコツは情報源となる「人」に会いにいくことだと言っていた。

今週末はサッカーの仲介人(代理人)たちとの飲み会があって非常に楽しみ。久しぶりに会う方も、はじめましての方も。会いにいくのは大事。それぞれの仕事の本質が言語化され書店に並んでいないことを知っている人たちは、優秀で、会いたがる。

仕事の価値を決めるのは自分じゃない、他人。クライアントの顔を思い浮かべられないなら、その仕事からは降りるべき。そういって、理由をつけてクライアントに書類を手渡しに行かせたこともある。『会いにいく』。暮らしがあって、仕事があって。それはもう14年前の曲。GRAPEVINEの国際フォーラム講演がとても楽しみ。先週のZeppTokyoでのSyrup16gも良かった。長生きしたい。