偶然の恵比寿

恵比寿の弁護士 藥師神 豪祐のブログ

そういうとこ

昨日、新人弁護士さんたちが一斉に世に放たれたそうです。おめでとうございます。4期目になろうとする弁護士として、これまでを振り返ってみることにします。先輩らしい振る舞いをすることが普段あまりないので、たまには言語化して残しておこうと考えました。

 

私が弁護士になるにあたって考えていたのは、①「しっかり稼ぐ」こと、②「やりたい分野で仕事をする」ことでした。いずれもほどほどは達成できていますが、①と②を融合した「やりたい分野でしっかり稼ぐ」ということは力不足で実現せず、①(一定程度)定型化して「指示や書面チェックのみで回る案件」で余力を発生させ、お金を時間に変え、②「やりたい分野」に打ち込むという生活をしています。債権回収のお仕事がおそらく適正に合っていたようで、紹介に次ぐ紹介で拡大してしまったのが現状です。拡大するにつれ、懐が深くなるにつれ、仕事の自由度は格段に上がりました。普段は「奇跡が起きたんです。えへへ。」としか言いませんが、結果を出してきたからこその現状なのではないでしょうか(そう思えるくらい仕事の質は各事務所・弁護士で全く異なります。例えば債権回収だけでも年に80件程度行っており、総案件のうち半分は相手方に代理人がつきますが、対応の質には驚くほどの違いがあります。)。

 

1 日常

私のクライアントは以下のとおりです。おそらく他の多くの事務所さんと同じだと思います。

・顧問先

・毎月まとまったお仕事をいただく取引先

・突発的なお仕事をいただく取引先

・飛び込み案件(芸能周りのみ)

 

顧問先は現在ほとんどありません。私が見聞きする範囲では、一般のビジネスと同様の速度でお仕事をされている事務所さんは(巨大事務所もそうですが)顧問先を持たない事務所の方が多いように思えます。「取引先」は、しっかりとした仕事をしないと離れてしまいますので、「顧問先」にしてしまわないのは、良い刺激になりますし健全だと思っています。もちろん別の考え方も大いにあると思います(以下、「もちろん別の考え方も大いにある」を2億回くらい省略して綴ります)。

 

「しっかり稼ぐ」型の業務は、指示出しと書面修正を中心としています。これにより、時間や集中力といった余力がかなり生まれています。運良く全ての日で余力が確保されていますので、突発の打合せに対応できるようになっています。ゲームやサッカーに関するものが多く、スーツで行くと完全に浮いてしまいますので、だいたい私服で過ごしています(すみません言い訳です)。ゆったりとした時間をもって生活しています。

 

何をしているかと言いますと、契約書チェックや、日常の相談、新規事業相談、利用規約・プライバシーポリシー作成などをひたすら行っています。取引先にMacBook Proを持っていき、お話を聴きながらデスクをお借りして仕事をすることも多いです(それが善いことか悪しきことかは別として)。私のようにフラっと仲良い企業さんのお手伝いをするタイプの弁護士さんは、こういう内容の業務になりやすいと思います。8割くらいは、弁護士のお仕事を始めてから出会った企業さんになります。

 

その他、刑事事件も扱っていないですし、一般的な民事もやらなくなりました。企業案件以外はほぼ手を出していません。例外として芸能関係のご相談が月に4,5件入るくらいです。 

芸能案件は紹介が多いです。おそらく芸能問題のリーガル的アレソレの意識喚起が彼方でなされている効果が大きいと思います(よく存じ上げませんが、能力の高いイケメンの弁護士さんがおられる?)。そこから流れて「これまでの実績」や「リーズナブルさ」でうちに転がり込んでいるという流れでしょう。交渉案件が多いので事務所の色にも合致しています。また、ノウハウも溜まっています(文春に撮られるなどという案件も発生しました)。案件的にはクライアントが有利な事案が多いため、ストレスのかからないものが多くなっています。

 

20代の頃に気づいたのは、「ストレスを減らすのは「興味」」説です。「興味」というのは偉大で、事案的に厳しいものや、時間を取られる案件であっても、クライアントの事業に共感していれば歯をくいしばることは苦になりません。いずれにせよ、短い命です。どの瞬間も「過程として我慢する」のは嫌なので、ストレスがかからない仕事を選んでいます。これは生き方なので変えられません。似た生き方をされている方も少なくないかと思います。ストレスが当たり前、という前提を疑って弁護士さん生活を送った方が良いです。人間の命って短い命なので。本当に。

 

2 このお仕事

仕事は、どのような仕事も、人と人とのやり取りになります(この仕事では、「クライアント」「相手方」「監督官庁」「裁判所」「世の中」といった人のことを気にすることになります)。「対人」の能力が仕事のクオリティの本質になるところは、他の職業と変わりません。何か特別な仕事だと思っていると、クオリティを発揮できないのではないかと思っています。

クライアントに出すメールも含め、弁護士が出すあらゆる文書に対し、すべて私がチェックして修正をかけています。これは必須です(私が見聞きする限り、巨大事務所を含め、しっかり仕事をしている事務所はどこもそうしているようです。(あ、そうそう。横のつながりは大事です。たくさん見聞きしましょう))。チェックする側の能力が高いわけではなく(適性の問題はあるでしょうが)、誰かがチェックすること自体が重要です。いまだに9割以上のメールになんらかの修正を加えています。相手方とのコミュニケーションも同様です。事前に指示を出すことは結果に如実に影響を与えるため、事前の指示を綿密に出すようにしています。

(そのような観点から申し上げますと、お一人で独立されるのは一度考え直した方が良いです。私でいえば、「3」で述べますように「受託制作」的なお仕事で、初期に徹底的に外部の色々な先生にダメ出しされたことが今の私をつくっています。日常に関しても、事務所内部に自分以外の弁護士がいた方が良いです。絶対に。)

例えば「任意交渉」を例にとれば、いくらロジックが整っていても、相手方が納得しなければまるで意味がないのは明らかです。「任意交渉」に限らず、ほとんどの局面で、相手方の「納得」をいかに調達するかが本質になります。「最高裁判例がこう言ってます。」「監督官庁ガイドラインにこう書いてあります。」といったものは、「納得」を調達するための一つの材料でしかありません。私どもの仕事は徹頭徹尾「対人」のコミュニケーションです。…と熱くなるには理由があるのですがここには書けません。

 

3 新規案件の獲得

綺麗ごとではなく、「目の前にある仕事のクオリティを確保すること」が新たな仕事を呼び込むことも、他の職業と変わりません。また、「興味」はここでも偉大です。クライアントのプロダクト・サービスや業界に通じていることは、クライアントのコミュニケーションを含む仕事のクオリティに影響します。常に好奇心を持って世の中の様々な出来事に注意を払うことは不可欠です。これも他の職業と変わりません。あとは、営業なんてしない方が良いです。日々を気持ち良い人間として気持ち良く過ごすのが最善の策です。…と熱くなるには理由が(略)

 

早期に独立したい方に言えるのはアレです。弁護士に限らず、新規事業をするにあたって、①まずは受託制作をして、受託制作によって「資本」や「組織としての仕事のやり方」が整ったら②独自の事業を行う、という過程を経るのが定番です。私は開業当初からこれを実践してきました。定番です。

 

と書いていたら好きな人が起きてきたので、続きはまた今度…(「2」を始めたあたりで力尽きました。しっかり後輩の面倒をみなさいよ、、そういうとこやで。。