偶然の恵比寿

恵比寿の弁護士 藥師神 豪祐のブログ

これからの働き方

専門学校の教え子の方たちのことをふと思い出しました。自分の役割はとても小さかっただろうけれど、うまく人生を歩んでほしいなあと思いつつ、この3月で社会に出ると思われる彼らのことを考えていました。そして隙あらば自分語りおじさん。

 

ゆるやかな連帯

「ゆるやかな連帯」というのがキーワードになる。と、昨今のあの人やその人は言ったし私も言いました。各自が自分の専門領域を持って、ゆるい連帯の中で暮らしていく。学校というコミュニティもきっとそうだったと思います。各自になんとなくの役割があって、どうやったら生活が楽しくなるか、快適になるかを試行錯誤したはずです。

社会に出ても同様です。「ゆるやかな連帯」の中でこれからも生きてきます。

「ゆるやかな連帯」の中で、①単に情報交換をするだけでも効果は抜群です。巨人の肩に乗ることで人類は進歩してきました(ピンと来ない方は「車輪の再発明」でググってください)。もう少し踏み込んで、②集まり合ってチームを組成して、スキルを分け合いながらそれぞれのやるべきことをやっていく。となればそれはもう。

生きるに当たってルールはないので、困ったら誰かを頼って、チームとして動けばいいんですよ。これはもう本当に。まったく別の仕事をしていても。遠くにいても。定期的に相談したり情報交換すればそれはチームです。

ただのお題目ではなく、ガチで「所有」から「シェア」へと世界は更新されています。モノ(UberAirbnb)だけでなく、ヒトの時間もシェアされ続けています(というか、学校も仕事も飲み会も、何もかもが限られた命から捻出する「時間」のシェアです。)。楽に快適に生きるために、限られたリソースの中、「何をどう使うか」「自分を社会のどこに置くか」の意思決定のうまさが求められる世の中になります。

そしてこの傾向は加速します。世界はこの先、人工知能が、「正解のある業務(雑務)」を次々に引き受けてくれるかもしれません。そうでなくとも、人を雇えば「雑務」は消えます。手持ちのリソースは限られています。なにをすればいいか分からないときは、まずは雑務を消すことから始めるとよいと思います。消していって、それでも残ったものが自分のやるべきことです。

 

他者と生きる(生きざるをえない)、せっかくなら楽しくゆるく、できるだけ楽をして

人工知能を待たずとも、人を雇えば「雑務」「自分自身がやらなくても良い仕事」が消えます。お金で時間はある程度買えます。自分のやりたいことに時間を使うためには、やはりお金の稼ぎ方も覚える必要があるかもしれません。限りある命の中で、私たちがやらねばならないのは、正解のない問題、自分の問題や世の中の問題をどう解決していくか、という点に尽きます。

と書くと意識高く思うかもしれませんが、「どうやったら自分や周囲の人たちが、より楽に、快適に、楽しく生きられるか」というのを追求することに尽きる、ということです。

個の時代、ゆるやかな連帯の時代。そうであれば、自分が持つ「情報」は何か「スキル」は何かと考える必要があります。人から頼られないとつまらないですし、何かを快適にすることもできません。お金からも遠くなってしまいます。時間を無為に失いやすくなってしまいます。

ヒントは常に「相手を助けたい」です。これから入れば、自然と自分を省みることができます。「モテたい」でも同じです。心から「モテたい」と求めれば、自分が持つ「情報」は何か「スキル」は何かを真剣に考え始めるはずです。「相手を助けたい」という気持ちは万能です。

(今はピンと来なくてもいつか気がつきます。「相手を助けたい」と心から思えれば、お金も稼ぎやすくなります。お金のことを考えるのは個人的には好きでないです。好きでない人は多いと思います。お金のことなんて考えなくていいくらいにお金を稼ぐというのは大事です。ピンとこなければ、まずは「助けたいと思える相手」を探すのが良いかもしれません)。

まったく異なる背景を持ち、まったく異なる仕事をしている人たちが世の中にはいて。彼らと仲良くなると世界は広がります。こういった経験はレアでないです。②の状態は、出会って弾けた広がりに似ているかもしれません(小沢健二さんは2017年にして様々なコラボを見せてくれました。熱情がはねっかえる)。

年々「餅は餅屋だなぁ」と思うタイミングが増えている33歳。餅は餅屋と呟いた陰獣は旅団に負けました。個の時代、ゆるやかな連帯の時代であれば、「人を見極める能力」もより一層、重要です。人を見限る決断もきっと重要です。そうしないと旅団に陰獣をぶつけてしまいかねません。

(唐突に小沢健二とか、ハンターハンターとか、今の若者にはひょっとしたら謎の言葉が紛れることはよくあります。何がどこで役に立つかは本当にわかりません。色々なことに興味をもっておくと人生はかなり楽しくなりますし、楽になります。)

 

自分が何屋かを把握する

「自分が何屋さんであるかを言語化する能力」や、「目の前の他者が何屋さんであるかを識別する能力」は、個の時代ではより一層重要になります。私がすでに陳腐化され尽くしている旧来の「弁護士屋さん」であれば今のような多くの選択肢を手にすることはできませんでした。専門学校で何かを教えることも多分なかったと思います。

自分が何屋さんかになれたのは、まだ弁護士になる前の20代の後半だったように思います。遅かったです。

意図を持って意思決定し続ければ、自然と自分の領域はできあがっています。何屋であるにせよ、意図を持った意思決定を続ければ何かしらの領域を手にできます。この確信が得られたのは33歳のいまになってかもしれません。今なら言えます。ちゃんと意図を持って行動し続ければ、自分の領域を手にできます。実は、人間の能力にあまり差はないと思っています。どれだけ真剣に生きているか、どういう癖をつけて生きてきたか、が全てを決します。

美味しいラーメン屋さんを知っているとか、そういうところから始めてみても良いかもしれません。ちなみに昨年末の私の家庭内目標は「平日夜デートをする」「料理のレパートリーを増やす」でした。家庭内料理屋さんや平日夜デート屋さんになるにはまだ時間がかかりそうです。とにかく、自分が持つ「情報」は何か「スキル」は何かと考える必要があります。

 

ゆるい連帯で情報交換をする

人類の進歩の基本は、巨人の肩に乗ることです。車輪を再発明しても意味がありません。誰かから「情報」を得たり「スキル」を分けてもらえば、その誰かの肩に乗って、より高いところに、遠いところにいけます。自分のなすべきことに対するヒントをもらうためのコミュニティがあると素敵です。ゆるい連帯をゆるゆる伸ばしていくと楽しいです。困った時の解決策が豊富になり楽になります。

例えば弁護士も情報交換は大事です。そのために大学やロースクールや司法修習があったのでは、と思うくらいに。当然、守秘義務の範囲内ではあるものの、条文・判例、業界の慣習、監督官庁の考え方といった貴重で本質的な情報を日々交換し合っています(そしてこれらの情報は絶対に本には載っていません)。

こういう案件が来たらこの人にLINE飛ばそう。という相手が何人かいると心強いです。私でいえば、法律がらみだと、個人情報保護や芸能案件だとLINEが来ます。その他にはゲーム大会の業界事情やら、サッカーのアンダー世代の情報交換などに呼ばれたりします(特にサッカーは嬉しい。ゲームの領域は正直自分の本質とは少し遠いです。)。

LINEが届いてはじめて「俺は××屋さんでもあったのか」と気づくことがあります。むしろ第三者の目を通してはじめて自分が何屋かを知るのかもしれません。

なんであれ「現場」にいるのが大事です。自分がどういう「現場」をもっているかは、即ち自分が何屋さんかという問いに直結しそうです。例えば私の2017年の現場は、サッカー界隈と法律家界隈でとある役割を果たすことでした。今年はまた少し違います。遠くても「助けたい」という気持ちが「お互いに」あれば、きっと何かしら一緒にできます。

 

ゆるい連帯でスキルを分け合う

解決すべき課題ごとにチームを組成して、集まって離れてを繰り返していく。最近は、こういう形でしかできない問題解決がありそうだなと気付きつつあります。

中心があって、誰かが手を引いて人を集める世界観とはまったく異なります(「誰かが弁護士同士のチーム組成の舵取りをしたらおもしろい。ランサーズ的な。しかし弁護士法等から中心にお金を落とすのが難しい。マネタイズは難しい云々…」というのはまったく的外れの古い世界観です。)。

各々が各々の目的のために集まって、そして散らばっていく。幻影旅団ですね。中心で「手柄」を欲しがったり「お金」を欲しがったりする人がいると、良い仕事はできません。旅団的やり方でしか解決できない本質的な課題は、いくらでも世の中や自分の中に残っています。

旅団では、経歴も肩書きも所属組織名も無意味です。これは本当に無意味です。裸の自分たちで牙を研ぐ必要があります。「肩書きはわかった。で、お前は今ここで何ができるの?」と問われます。現場に出ると何も頼れません。個の能力はすぐにバレます。

苦い経験もありました。

とあるサッカー代理人に「世界最強のクラブをつくってみて。はい今から11人挙げて」と問われ挙げると、「××にするのは何故?○○を入れた方が良くない?隣のポジションの△△とチームメイトだし。選手同士の相互理解は考えた?」などの問答を受け、すぐに各配置のロジックを組むことができず悔しい思いをしたことがあります。

現場の情報を知り仕事として向き合うことと、外から趣味で見渡していることとの本質的な差は深いです。世の中は、責任を負わないとわからないことだらけです。

 

とかなんとか言いながら隙あらば自分語り

自分に物足りなくなってしまい、私は来月からとある組織に所属してみることにしました。日々の世の中の動向をみながら、「ここなら働いてみたいなぁ」と漠然と思っていた唯一の組織にお邪魔できるのは本当に運が良かったです。

野良で弁護士をしながら稼いだ情報やスキルセットとの相性も良さそうです。どの程度の期間そこにいるかはまったくの不透明ですが、忠誠を尽くします。

六本木おじさんになりますが、恵比寿の法律事務所の方も引き続き私が持っています。責任も負っています。直接関与できる案件は増えませんが、事務所としては拡大していくと良いのではないかと思っています(そして私の口座も相変わらず膨らみます)。

「万全の状態」を待ってたら永遠に動けない。という訓示が好きです。

 

…書き下してみたものの、多分これを整えて量を半分くらいにしたら良い文章になりそうですが時間がないのでさようなら。モンハンやります。