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偶然の恵比寿

恵比寿の弁護士 藥師神 豪祐のブログ

ソフトロー

法律

■文言と解釈

・国や地方公共団体が定めたルール(実定法と呼ばれたりする)を扱うのが法律実務家のお仕事の中心になっている。と聞いている。

・ルールがある。ルールに事実をあてはめる。ルールに書かれている法的効果が発生する。国家がそれを最後の最後には執行する。そして、ルールは文字でできている。

・法令の文言から一義的に解釈が定まらない場合も当然ある。そのような場合には、法解釈という試みの中で、「妥当な結論」に向けた微調整が行われる。そこでは、起草者の意図・沿革、利益衡量、体系的整合性といった様々な武器が持ち出される。時には、より上位のルールである憲法を持ち出して、ルール自体に異議を唱える場合もある。比較法といって、海外ではこうなっていてこういう理由でうまくいっている、という話を持ち出すこともある。ビジネスの見立てと同様。思考空間を回していく過程に一歩目の誠実さが宿る。

・言葉で書かれている以上、解釈の「余地」がある。「余地」がもたらす機能は、「妥当な結論」に至るためには欠かせない場合もある。解釈が一義的に定まらないことは必ずしもマイナスではない。

・もっとも、ルールがあまりにも曖昧だと弊害が起きるのはご想像のとおり。例えば新規事業を起こそうと考えている起業者からすると、「これもダメなんじゃないか」「あれもダメなんじゃないか」と疑心暗鬼になって萎縮してしまう。そんなわけで予測可能性の確保は重要な課題になる。

 

■グレーゾーン解消

・「予測可能性の確保」という最重要課題。これには当然ながら、歴史の中で様々な手当てがなされている。

・新規事業に関していうと、例えばノーアクションレターという制度がある。事業者の行為が規制対象となるかについて予め照会すると、法令を所管する官庁が規制対象か否かについて回答してくれる制度だ。

・使い勝手があまりよくなかったので、平成26年にグレーゾーン解消制度、企業実証特例制度という制度も創設されている。いずれも新規事業の促進そのものを目的とした制度(根拠法令は、その名も産業競争力強化法)で、後者はなんと、新規事業が規制対象となってしまう場合に、安全確保などの措置をとることを条件に、やっていいよと特例を設ける制度になっている。

・ぱっと見ると、ノーアクションレターとグレーゾーン解消制度は似ている。厳密にいうと、前者は照会の対象となる法令に制限があるという違いはある。もっとも、新規事業を行うにあたり萎縮させないようにするという点で趣旨を一にする。

・ではなぜノーアクションレターがあるのに別の制度ができたか、というと、政権が飛ばす矢が2つでなくて3つである必要があったのは以前の記事の通りだが、他にも理由がある。

ノーアクションレターは、規制当局に対して照会する制度になっているのに対し、グレーゾーン解消制度は、事業所管大臣を通して照会するという制度になっている。法律実務家の中では、この違いはさすがに大きいよね、という認識がある。規制当局がNOを突きつける論理や怪しい迫力を過剰に蓄えていることは、誰もが積み上げてきた経験則になっている(もちろんそうすることが役割なのでそれでいい)。

・ちなみに、賞金付ゲーム大会についての問合せを人類史上初行ったと主張する者がいるとする。その場合おそらく、①ノーアクションレターを用いていること、②照会の前提としている事実が一般的ではないこと、からして、法律実務家からするとハテナしか浮かばない内容になっているはずだ。あくまでも照会の前提として述べた事実を基にした回答しか得られない(また、「ノーアクションレターの公表を受けて賞金制度を変えた大会がある」とまで言っているとすれば、以前から当局と折衝しながら動いてきた業界全体に対する冒涜であろう)。

・グレーゾーン解消制度は、事業を所管する官庁が、規制当局との間に入る形になるので、この国の産業全体において前向きなものとなりやすい。さらに、企業実証特例制度とのリンクまでついている。うまくいけばとっても素敵な制度となるだろう。

 

■ソフトロー

・実定法と言い換えた、国や地方公共団体が定めたルールは、ハードローとも呼ばれている。これに対し、ソフトローという概念がある。が、ここで紙面は途切れている…。